今日は1944年にいわゆる海軍乙事件(かいぐんおつじけん)にて連合艦隊司令長官 古賀峯一海軍大将が搭乗機の墜落により殉職された日になります。
 
本日ご紹介の患者さんはたれ目形成術をお受けになられた患者さんです。
 
上段:術前です。
中段:このようになりたいと患者さんご自身の指で下瞼をさげてくださった状態です。
下段:術後約5日目抜糸時です。  (写真は患者さんの快諾を得て供覧しています)
「もう少しさげてもよかったかなぁって思ってます」とのご感想でした。
 
私としてはこれ以上下げると明白な三白眼になりますのでお勧めはしません。
 
最近の再診日にいらしておりません。 便りがないのは良い便りと信じたいですが定期健診は大切です。またの再診をお待ちしております。
 
先日あるスタッフが針刺し事故(患者さんの血液のついた器具で自身の体を偶発的に傷つけてしまう事故:患者さんの感染症が感染する可能性があります)を起こしました。
 
簡易検査キットで患者さんの血液がHIV陽性でしたのですぐ都立駒込病院にいってもらい感染防止のために三剤併用療法を開始してもらいました。
 
この事態の衝撃は大きく同日夜に某スタッフから「もう疲れ果てました。」と退職届を提出されました。
簡易検査キットでは擬陽性の可能性もあり確定診断を行わなければ1ヶ月間薬の内服をつづけなければなりません。 飲み始めてからすぐ下痢と吐き気を体調不良に苦しむスタッフを目の前に私も偽陽性か陰性か否かの確定診断を行うべく患者さんに協力を求めるべく再診時に採血検査のご協力をお願いしました。
 
残念なことに「再検査の採血は許可できない」とのことでした。 10年前に某美容外科でHIV陽性を指摘されさんざんな目にあわされ嫌な思いをしたので協力できないとのことでした。 「私は偽陽性です」とおっしゃる患者さんに本当に偽陽性なら薬の内服をストップすることができ辛い副作用からスタッフが脱することができるので再三採血を私からもそして針刺し事故を起こしたスタッフからもお願いしましたが御許可をくださることなく患者さんはクリニックを後にされました。
 
本件の衝撃はすさまじく、著しいスタッフの士気の低下を招きました。
 
当院では今までは患者さんの身体的、金銭的負担を最小限にするべく、また医療機関が感染症による差別を助長してはいけないとの信条にて術前の感染症チェックは行わず(感染症に対する対応はスタンダードプレコーションで予防し、万が一針刺し事故が起きてしまった場合は患者さんに採血を協力していただき速やかな治療を開始するという方針でした。) 血液検査は必要最低限にしかおこなっておりませんでした。
 
健常者を相手にしている美容外科にて行われている血液検査は医療従事者をいざというときの針刺し事故から守る(感染症の患者さんの手術を断る)ために行われているのがほとんどの場合の主目的と思われます。 
 
当院の感染症対策として手術の際はすべての患者さんをHIV陽性と仮想定して感染症対策をおこなうユニバーサルプレコーションで対象とした血液や体液、排泄物に加え、手洗いや呼吸器系、結核予防策も盛り込んだスタンダードプレコーションを標準予防策とすることで対策を実施してきましたが、偶発的な針刺し事故の前にはこれらの努力も無力です。
 
そして患者さんの協力なしにはその後の針刺し事故を起こした医療従事者の治療方針を定めることができません。
 
簡易検査以外に検査会社に提出した検査結果は以下の通りでした。
ただしこれもスクリーニング検査なので本当に陽性か否かを判断するにはウエスタンブロット法と核酸増幅検査が必要です。 このスクリーニング検査陽性で真の感染者は10%以下といわれています。
 
患者さんが真の感染者と御自覚されていて精査を拒否されたのかどうかわかりません。
しかし拒否をされた以上スタッフは患者さんが真の感染者であると想定して一ヶ月間薬を内服し下痢と吐き気と全身倦怠感と戦わなければなりません。
 
患者さんがいままでHIV抗体陽性者として各所でうけてきた差別は想像を絶するほど辛かったのだと思います。辛かったお気持ちはわかります。 患者さんがスタッフに「採血は協力できないけどきちんと予防薬を飲んで下さい」と発されたあの言葉に全てが込められていると思います。
 
最後に拝見したあのさびしげなお顔からはおそらく再診にはいらっしゃらないと思います。
 
私はしがない一臨床医でありHIV撲滅の研究を行っているスーパードクターではありません。 
私がただただ願うことは本件におけるスタッフの未感染と一刻も早くHIVを撲滅する新薬が完成されいつかかの患者さんが「先生 あの時はご迷惑をおかけしました。」と笑顔でまた御来院してくださることです。
 
現時点では私は患者さんの安全を守るのみならずスタッフの安全を守る義務があります。
本件を契機とした著しい士気の低下はクリニックの崩壊を招来し私が理想とする医療をご提供できなくなります。
 
こころならずも感染症になられた方々を差別するようなことになり忸怩たる思いですが今後手術によっては術前血液検査を必須とし、またスタッフの人員の関係上針刺し事故後の安全が確保できない感染症に罹患されている患者様に関しては対応可能な大学病院等(最近は大学病院でも美容外科を行うところが増えてきました)のしかるべき施設での施術をお勧めし当院での施術はお断りさせていただきますのでご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
 
 
 
 
 
 
先日お心遣いをいただきました。


ありがとうございます。どうか御気を遣わないでください。

2009-03-31

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