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最近、私がする手術に対して「なんでそんなに安いんですか? 安すぎて不安なんですが・・・」とよく聞かれます。

以前私がレジデントをしていた病院で救急部をローテーションしていたときにO先生という先生がいました。
その先生は愚痴ひとついわず朝から晩まで連日働きその博識さには私は度肝をぬかれていました。
救急部ですから事故等で運び込まれた人々が連日のようにお亡くなりになります。 人が亡くなるとき多くの場合は血圧が下がっていきだんだんと心臓の脈拍の間隔が伸びていって最期に心停止に至ります。 そして医師が瞳孔の対光反射、自発呼吸の有無、心臓の鼓動の有無を確認してそれらがないとなるとご臨終を告げることになります。 そしてなぜかお亡くなりになられるときは明け方ちょっと前が多いのです。
「この方はもうすぐ亡くなるな・・・」と大体の予想がつきますが脈が序々に伸びていって最期の心停止に至るまで時間がそれなりにかかりますから担当医は気を配りつつも心停止間際になるまで他のさまざまな仕事をしていることがほとんどです。
しかしO先生は夜中だろうと明け方だろうとずっと家族と共に患者さんに付き添いご臨終をみとっていました。 「先生、私が診ていますのでしばらくお休みになられたらどうですか?」と声をかけても「いや、いい。」 と動きません。

ある日彼に尋ねました。「先生、なぜずっと付き添っているのですか? 連日これだけの業務をこなしてクタクタのはずなのにいつ先生は寝ているのですか?」
彼は一言私にこう答えました。「世の中に僕みたいな医者が一人ぐらいいてもいいだろう。」

多くの医師に出会いましたがあれだけ博覧強記で名声を一切求めず自己を飾らず目の前の患者さんに全てをささげることができた医者は彼をおいて他はいませんでした。

日本全国には彼のような実直な医師達が散在していて医療現場の最前線を支えているのだと思います。 

そのような先生達の給与は労働時間とその責任と比較すると薄給だと思うのですが美容外科の求人を医療情報誌でみるとたいていそのような大変な科より給与が高めです。
美容外科は他科にくらべて急患が少なく、当直もなく、給与が高いとなれば一般的な感覚でいえば人気の科になるはずです。

しかし実際は人気がなくて人が集まらないから高額の給与を提示しているのが現実でしょう。

なぜ人気がないのか?  それは日本の医師達がまだまだマトモだからだと思います。 医師を目指した時の原点、病める人の一助となりたいという思いがあるからこそQOL(生活の質)の高さやお金だけでは動かない先生がまだまだ多いのだと思います。経験上マトモな医師ほど美容外科を胡散臭いものとして白い目でみる傾向にあります。 これは単なる偏見とかたづけられるものではなく実際美容外科側の問題がたくさんあります。 医師の脱税、不正請求、破廉恥な犯罪、シリコンジェル注入等による後遺症・・・マスコミに載るこれらの記事の中でなぜか美容外科医が多いのです。

今の日本の医療制度では保険制度のためどのような名医の処置でも保険組合から支払われるお金は凡医と一緒です。 しかし彼らの病気を治す技術や知識、経験が評判となり患者さんは集まってきます。 収入が増えるわけではなくともそれがやりがいとなり日本の一般の科の医師は頑張ります。

翻って日本の美容外科医はどうでしょうか? 

多くの美容外科手術の手技自体は実は一般の中堅どころの外科や整形外科、形成外科の医師が行う手術よりも難しくありません。 よく形成外科医が美容外科をやるのが適切という表記もみますが点滴用に静脈に針を刺すのに血管外科医が適切と表現するのと同じぐらい意味がないというかマトモな形成外科医にとってもいい迷惑だと思います。形成外科の医局によっては学会で美容外科のブースに近づいただけでも退局という医局があるぐらい美容外科がタブーな医局もあります。形成外科医が開業すると確かに開業医レベルでmicrosurgeryや皮弁移植等できないので勤務医からの天下り先として美容外科の領域を確保しておくというのは開業形成外科医にとっては大切な問題かもしれませんがそれは医師の生活の糧のために大切な問題であってまず第一に考えるべき患者さんのためではありません。

独立標榜科として存在する美容外科およびその恩恵を受ける日本国民のためにも私個人としては形成系、十仁系という枠組みを超えて美容外科学会が統合開催されてほしいのですがそれぞれの団体の権益争いのためにそうならないのが残念でなりません。

日本の美容外科の評判というのは美容外科手術に対する後ろめたさもあって公に語られることがありませんでした。 よって患者さんが選択するときの選択手段として宣伝広告に主に頼らざるを得ませんでした。
本来は患者さんは医師の技術を知り選ぶのが本来のあるべき姿ですが今までは誇大広告的な宣伝文句(広告で患者を集める=広告商法)や経歴(○○専門医との経歴で集める=経歴商法)、学位(○○博士との学位で権威付けて患者を集める=学位商法)、著作本(本を書いて宣伝する=バイブル商法)等しか患者さんが美容外科医を選ぶ判断基準がなく、美容外科医側もそれらを宣伝道具として患者集めをしていたのは美容外科の不幸な一面であったと思います。

しかし時代は変わりました。 今後はインターネットの普及と共に空虚な情報に基づいて医療機関が選択されるのではなく各々の美容外科医がインターネット上に晒した日々の臨床結果が閲覧、吟味される事により適切な医療機関が選択されていくことになると思います。この日本の美容医療を変えていくきっかけとなっていくであろう日々の臨床記録としてのブログへの写真提供をしてくださった患者さん方には深謝します。 一人一人のご協力が日本の美容医療をよりよい方向へ変えていくきっかけとなっていっていると思います。 将来、多くの美容外科医が日々の臨床を晒すようになった結果として今後私自身が美容外科医として淘汰されていくこととなっても全く後悔はありません。

美容外科手術はより自信と喜びに満ちた人生を歩む一助となれる幸福の医学である一面、人のコンプレックスや欲望に医療者側がつけこんでお金をむしりとることができる負の一面があります。

もちろん病気に対する医療も病気につけこんでお金をむしりとることのできる負の一面があるじゃないかといわれればそれまでですが、まだ日本の場合は保険制度のおかげで例え悪徳医にかかっても悪徳医は保険制度の悪用はすれども患者さんそのものの心理につけこんで患者さん自身から大金をせしめることは通常はないでしょう。

ところが美容外科に関してはそのような保護機構が働かないためコンプレックスや欲望の刺激され具合によって患者さん自身が大金をだしてしまうことになります。

私にとって美容外科は幸福の医学であり好きであってももやはり疾病を治す他科と比べればいくら美辞麗句を並べようとも医者の中では落ち武者の科だと思っています。

ただし落ち武者にも矜持(きょうじ)と美学があります。

人のコンプレックスやより美しくなりたいという欲望につけこむのは私の美学に反します。

幸福になるためにお役に立ちたいのであってつけ込みたくはないのです。

もちろん健全な医療の提供には健全な経営状態でないといけません。また希望する施術が高額で受けれない方々のためにも社会的に存在意義があるクリニックにする必要もあります。持ち出しになるわけにはいかないのですがそのためにもこの施術は値上げしてこの施術を値下げしよう・・・等スタッフからの提案等もおりまぜて可能な限り患者さんには施術を廉価で、勤務するスタッフには好待遇を提供することのできる医療機関になってくれればな・・・と思っています。 

全てを無から始めて自分が理想とする美容外科医療をダメもとでいいからやってみようと思ってやってきました。不審がる患者さんもたくさんいましたが少しずつご理解くださる患者さんが増えてきてくださってありがたく思います。

いつもあのO先生の「世の中に僕みたいな医者が一人ぐらいいてもいいだろう。」という言葉が頭をよぎります。

私が勤務するクリニックにはなぜかいい人々が集まります。 
いままでの病院生活では経験しなかったことです。自分でも不思議です。 よき患者さんとスタッフに囲まれ幸せです。

さて本日ご紹介の患者さんは鼻尖縮小術、耳軟骨移植術をお受けになられた患者さんです。

上段:術前です。
下段:術後一週間抜糸時です。(写真は患者さんの快諾を得て供覧しています)

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鼻先を下げたいとのことで耳軟骨を利用し鼻先を下げるように移植しています。
順調な経過です。

差し入れを戴きました。

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ありがとうございます。 深謝いたします。

2007-03-05

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